食後、数時間から数日経ってから、頭痛、肩こり、めまい、下痢、疲労感、肌荒れ、ニキビ、アトピーなどの症状が現れる遅発型フードアレルギー。かゆみ、じんましん、呼吸困難などの急激な症状が食べた直後に出る即時型のアレルギーと異なり、比較的軽微な症状であるため、病院でも体調不良の一種と片付けられてしまうケースもあります。
陸上競技を中心に、アスリートのコンディションを科学的にサポートする研究と実践を長年続けられている杉田正明先生は、この「遅発型フードアレルギー検査」がスポーツ選手のコンディションづくりに有用であることに着目されています。その杉田先生に、オリンピック選手への検査実施のを通して感じた、遅発型フードアレルギー検査の重要性について伺いました。
澤登 遅発型フードアレルギー検査のようなアプローチは、今後スポーツ界に広がっていくとお考えですか?
杉田 フードアレルギーには「好物を我慢するストレスがある」「改善までの期間が特定できない」といった課題もまだあると思います。しかし、このアレルギー検査は、最高のパフォーマンスをあげるために、目に見えない阻害要因を取り除くというすごく重要なもので、アスリートにとっては、欠かせない検査のひとつになってくると思います。
体力には、「行動体力」と「防衛体力」という2つがあると言われています。「行動体力」は筋力、スピード、持久力といった、スポーツパフォーマンスに直接影響するもので、数値化できるもの。かたや「防衛体力」は、身体の外部からの様々な刺激に対して反応して恒常性を保つ力です。暑さ、寒さ、湿度、時差や病気に対する適応力などで、これは数字にすることができません。
遅発型フードアレルギー検査で明らかになる腸内環境の良し悪しなども、この「防衛体力」に含まれます。そして、この「防衛体力」こそが、スポーツのパフォーマンスをしっかり支えていく基盤になるのだと思います。ですので、パフォーマンスの数値だけではなく、「防衛体力」を高めることも重要です。
実は、数値化できるものはそれほど多くなくて、遅発型フードアレルギーのように、目に見えないものを客観的に数値化できるものがまだたくさんあると思うんです。それらを可視化することで、食生活や生活習慣をどう改善していくかという、新たな気づきが生まれると思います。
澤登 アスリートのコンディションを個別に管理していく方向性は今後も進んでいくのでしょうか。
杉田 血液からは、いろいろなことが分かります。ただ、選手のコンディションには検査のタイミングも非常に重要です。ベストのタイミングで、遅発型フードアレルギーや栄養バランスといった検査を取り入れたいですね。そして、選手の状態を的確に把握できるような測定や指標に注目しながら、体調の可視化に今後も努めていきたいと思います。
澤登 本日は、貴重なお話をどうもありがとうございました。
【インタビュー実施日:2012年12月】