排出を必要とする有害ミネラルにより、投与するキレート剤が異なります。鉛やカドミウムに対してはEDTA(エチレンジアミン4酢酸)、水銀やヒ素に対してはDMPS(2-3ジメルカプトプロパン-1-スルホン酸塩)やDMSAというキレート剤を用います。どのキレート剤を使用するかについては、検査結果に基づいて決定します。
体内に有害ミネラルが蓄積すると、下記のような症状が現れます。
疲れやすい・肌荒れ・アレルギー・むくみやすい・筋肉や関節の痛み・頭痛・頭が重い・イライラや集中力低下・目の疲れ・冷え性・肩こり・めまい・しびれ
これらの症状は、病院で検査をしても病名がつかず、治療の対象とならないことも多いのです。しかし、放置するとさまざまな病気の原因となることがあります。発がんや不妊の原因となることも知られています。
思い当たる症状がある場合、有害ミネラルの蓄積を調べるための検査を受けるとよいでしょう。
- 毛髪検査
体内の有害ミネラルを簡単に調べる方法としては毛髪ミネラル検査があります。
これは、過去3〜6ヶ月にどのような有害ミネラルに暴露されたかを評価するのに有用です。根元の毛髪を数箇所から切って提出するだけで簡単に検査することができます。
検査結果が出るまでに2週間程度かかります。 - 尿負荷検査(プロポケーション検査)
実際に体内にどれだけの有害ミネラルが蓄積しているかを詳細に調べるには、尿負荷検査と呼ばれる尿検査を行います。実際にキレート剤を点滴もしくは内服後、6〜8時間尿を溜めていただき尿内に排泄される有害ミネラルの量を測定する検査で、治療効果を評価する際にも有用です。
検査結果が出るまでに2週間程度かかります。
- 鉛、カドミウム、アルミニウムなどに対しては、EDTAの点滴を行います。この場合、とくにCa-EDTA(カルシウムEDTA)を用います。点滴時間は1回20-30分です。
- 水銀、ヒ素に対してはDMPSの点滴を行います。この場合、点滴時間は、1回30分です。
- 水銀、ヒ素に対しては、点滴の代わりに、DMPSやDMSAの内服治療を行うことがあり、この場合、1ヶ月に6日間これらのキレート剤を内服します。
- 点滴の場合、週に1回〜2週に1回点滴を行い、10回終了した時点で再評価します。内服の場合、3ヶ〜4ヶ月後に再評価します。
- 症状が改善または消失した場合、あるいは、15〜20%有害ミネラルが減少した場合が治療終了の目安になります。
使用するキレート剤によって副作用は異なります。
DMSAの副作用
- 腹部症状
腹痛や腹部膨満感、下痢などの胃腸症状が10%程度の患者さんに見られます。副作用のほとんどが腹部症状で、症状が強い場合は、内服を中止する必要があります。中止により症状は改善します。 - 皮疹(治療継続困難例も報告されている)
頻度は高くないですが、症状が強い場合は投与を中止します。 - アレルギー
DMSAにアレルギーがある場合、治療継続はできません。 - その他
肝臓酵素(AST/ALT)の上昇が報告されています。
DMPSの副作用
- 皮疹(多形性紅斑など)
DMPSによる最も多い副作用は皮膚症状です。ほとんどは、投与中止により改善します。 - めまい・動悸
一過性の血圧低下、めまい、動悸が報告されています。これは、投与速度が速すぎる場合に起こることがあります。点滴速度が原因の場合、点滴で30分かけて投与すれば安全に行うことができます。 - 必須ミネラルの減少
DMSA に比べ、銅、亜鉛などの必須ミネラルとの親和性が高く、体外に出やすくなってしまいます。キレーション療法期間中は、必須ミネラルの補充が必要になります。 - アレルギー
DMPSにアレルギーがある場合、治療継続はできません。 - その他
肝酵素の上昇、ヘモグロビン濃度の減少が報告されています。
EDTAの副作用
- EDTAの副作用については、こちらをご覧ください。