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2007年01月17日
テストステロン:老化への対抗手段となるのか?
主要な男性ホルモンであるテストステロンは良くも悪くも、男性が男性であるための重要な役割を担っていると考えられてきました。
このホルモンには筋肉の発達に役立ち、性的欲求を高め、エネルギーを維持する利点があると言われています。その一方で凶暴性を増長させる悪因にも挙げられます。
しかし分泌量は20代をピークに少しずつ減り始めます。
ではテストステロン値が著しく低下することはあるのでしょうか。またそうなった時、どのような変化が起こるのでしょう?テストステロン補充療法を行うべきなのでしょうか?
ここではエモリー大学の老人病学者で、65歳以上の男性に及ぼすホルモン補充療法の影響について研究されているリサ・テノヴァー博士の話をもとに、テストステロン欠乏症とその治療について学んでいきます。
●テストステロン欠乏症の症状とは?
身体的症状としては、脱力感、疲労感、筋肉量の減少、骨がもろくなる、赤血球の減少、性機能障害(精子の減少、性的欲求の低下、インポテンス)など。
心理的症状としては、うつ、不安感、記憶障害、認知機能の低下など。
●すべての高齢男性に影響があるのか?
テノヴァー博士によると、テストステロン値は加齢と共に低下しますが、中には欠乏症にならない男性もいるようです。正常範囲の最も低い値であってもテストステロン量が足りていることもあります。閉経と同時に女性ホルモンのエストロゲンが激減する女性とは異なり、男性の場合、テストステロン値は20年以上もかけてゆっくりと減少していきます。そのため症状を特定するのが困難なのです。
テノヴァー博士は次のように語ります。
「どれくらいの人数の男性がテストステロン欠乏症なのか、実際の数字を把握するのは難しいといえます。テストステロン欠乏症をどう定義するかによって、65歳以上の男性の5%程度になるかもしれませんし、50%にまで上がるかもしれません。正常範囲が極めて広く、個人差が激しいからです。また血液中のテストステロン値は1日のうちで変化するために、検査する時間帯によっては最高値や最低値が存在します。」
●テストステロン補充療法の効果は?
テノヴァー博士によると、現在、ほとんどの一般の医師はテストステロン欠乏症の治療は行っていないということです。
「生命にかかわる問題と考えられていないので、診断や治療のガイドラインがあいまいなのです。」と博士は説明します。
しかし博士の研究では、多くの男性がテストステロン補充療法によって症状が改善しています。この療法は決して若さを生む泉ではありません。しわを伸ばしたり抜け毛を予防したりということはありませんが、補充療法には次の効果があります。
・骨密度の安定及び増加
・活力や気分の改善
・筋力アップと脂肪組織の減少による身体組成の向上
・性的欲求と性的能力の維持及び回復
このような結果があれば、博士がエモリー大学で行っているような研究へ志願する男性がいるのも当然でしょう。博士の患者のほとんどは任意で参加しているのです。
●ほかに学ぶ必要のある事柄は?
博士は次のように述べています。
「5年前に比べれば状況はかなり進歩しています。当時はテストステロン値が加齢と共に減少するかどうかすら定かではありませんでした。しかしテストステロン補充療法の利点とリスクを完全に理解するためには、もっと多くのデータが必要です。」
短期間の安全性データ(過去3~4年のデータ)では問題はないように見えますが、多くの疑問は残っています。
「テストステロン値の測定方法や、治療が必要だと判断する方法を改善しなければなりませんし、安全性と効果に関する長期的なデータも必要です。閉経後の女性におけるエストロゲン補充療法の研究に比べれば、この分野はかなり遅れています。必要なデータ収集のためには大規模で多施設の臨床試験を行うべきでしょう。」
●今、男性がすべきことは?
・自分のテストステロン値を把握すること
自分の健康的な基準値を知るために若いうちから数値の測定をしておくべきでしょう。
・健康的なライフスタイルを維持すること
慢性疾患、肥満、喫煙、習慣的な飲酒などはテストステロン値の低下を引き起こす可能性があります。処方薬の摂取によっても数値が下がることがあります。
・医師に相談すること
テストステロン欠乏症を疑っているのであれば、かかりつけ医と話をしましょう。数値の低下が見られ症状も出ているようなら、より詳しい検査と診断のために内分泌医を紹介してくれるはずです。
-テストステロン補充療法の利点-
テストステロン欠乏症であると診断された男性の場合、補充療法の効果は以下のとおりです。
・活力と体力の向上
・骨密度の増加
・筋肉量の増加
・体脂肪の減少
・気分の改善
・性的欲求の回復
・うつ症状の改善
テストステロン補充療法の難点
・症状と治療について広く理解されていない
・長期にわたる影響に関するデータがない
・補充療法によって善玉と悪玉コレステロール値が下がるため、心臓病患者の治療には注意が必要
・体液貯留(全身のむくみ、肺に水がたまる等)を引き起こす可能性がある
・赤血球数の増加
・乳がんや前立腺がんの患者は腫瘍が増大する可能性がある
・テストステロン値が不安定になるために、攻撃的で怒りっぽくなったり、気分のむらが激しくなる
・激しい痛みを伴うテストステロン注射を2~3週ごとに行わなければならない
・パッチやジェルの場合、皮膚のかぶれを起こす可能性がある。
投稿者 : kenkoo 09:40
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