Ｑ:カロリック･リストリクションは新しいアイデアなのですか？

Ａ：カロリック･リストリクションは６０年にわたって知られており、ネズミなどを使った実験でもその結果は出ています。カロリック･リストリクションによってネズミの寿命は最大限に延び、ガンやそれ以外の高齢期特有の病気の発症も減少しています。実際、さまざまな実験を試みましたが、カロリック･リストリクションを行ったネズミだけがその寿命を延ばしています。

Ｑ：新しい情報はありますか？

Ａ：ネズミとアカゲザルに関する最近の研究と、それ以前の結果を照合すると、大きな可能性が明らかになってきました。免疫系の老化、アイレンズのタンパク質、酵素活性、学習および行動などを含む、数百もの加齢を感知する生物学的指標から判断し、カロリック･リストリクション（対象群が摂取するカロリーを半分に減らす）を行ったネズミは、「より若く長生き」していることが分かりました。中年またはそれ以降にカロリック･リストリクションを始めたネズミでさえ、骨格筋の減少が遅くなるといったような肯定的な結果を見せています。

Ｑ：アカゲザルでの継続中の研究はどういった状態ですか？

Ａ：私たちは現在、国立衛生研究所からの追加融資を受けています。アカゲザルの研究は非常に興味深い状況になってきています。１９８９年に研究を始めた３つのアカゲザルのグループは、高齢になっているため、間もなく生理学上の変化を見せるでしょう。これによって加齢における違いを観察することもできます。また、カロリック･リストリクションが、人間以外の霊長類に対して、老化や加齢による病気を遅らせることができるのかも判断することができるようになります。この研究が完了するまでには１５～２０年がかかりますが、カロリック･リストリクションを行っているサルの糖尿病の進行が遅れること、そして骨関節炎の徴候が少なくなることを私たちは確信しています。

Ｑ：カロリック･リストリクションはどのようにして作用するのですか？

Ａ：細胞内のエネルギー生成の間に作られた“フリーラジカル”により引き起こされた損傷と老化には関係性があると、私を含め多くの科学者たちが信じています。カロリック･リストリクションを行ったネズミの脳内、心臓細胞、腎細胞のミトコンドリアは、少量のフリーラジカルしか生成せず、また通常の食生活を送るネズミと比べて損傷が少ないことを示していることをサザン･メソジスト大学の研究チームは発見しました。摂取カロリーが少ないということは、ミトコンドリアによる酸素の消費が低いことを示し、また低カロリーの食生活は、ミトコンドリアの酸素燃焼の効率を増大させるます。このプロセスがしっかりと理解されれば、フリーラジカル生成を減少させるため、もしくは原因となる損傷を制限するための薬剤が開発されることでしょう。また私は近い将来に、カロリー摂取を制限させたい人のために、より良い食欲抑制剤が開発されることを望んでいます。

Ｑ：カロリック･リストリクションが人々にとって意味することは？現在の知識に基づいて、今、何かできることはありますか？

Ａ：カロリック･リストリクションの人間における効果はまだ明らかにされていません。もしこの結果が人間にとって意味深いものであると証明されたとしても、実際に何ができるかはまだ不透明です。人間の行動は複雑です。食生活に気をつけ、定期的な運動を心がけ、禁煙をし、シートベルトを着用していても、人々は長生きや健康的に生きられる選択をしていないこともあるのです。医師としてではなく研究専門の科学者として、私は医学的な忠告ができる立場ではありません。しかしこれは言えます。どんな年齢の人でも、カロリック･リストリクションを行ったり、運動を増やしたりして、体脂肪を減らすための努力をするべきです。それと同時に、栄養素の摂取を減らさないように気をつける必要もあります。特に老齢者は食糧摂取量が減少するため、栄養失調の影響を受けやすいからです。